本日、日本映画ペンクラブで『歩けない僕らは』が上映され、佐藤監督がQ&Aに登壇しました!
佐藤監督は、「それまでは自分の内側から出てきたテーマしか撮ってきていなくて、自分の外にある題材に自分がどうリンクしていくのかというところは努力しなくてはいけない部分だなと思っていたので、かなり怖かったですけれど、挑戦させていただきました。どうやったらそこに近づけるだろうと思って、半年以上そういうものが見つかるまで病院に通わせていただいて、取材させていただきました。なかなか見つからなくて、かなり書けなかったです。取材を重ねた後半に書けるんじゃないかというものが見つかって、バーっと書けました。」と初めての挑戦について話しました。
「最初から短編にしようと思ったのか?」と聞かれ、「自分の描きたいものが見つかって濃くしたものを短編なら描けるのではと思いました。長編で薄まってしまうのが怖かったです。」と答えました。
「ラストシーンはもともとは、『彼女自身が(患者さんと)病院で築き上げた信頼関係が外に出て崩れてしまう、外の世界もあるという苦さを知る』というような脚本だったんですけれど、編集の段階でそれが作為的に感じてしまいました。僕が勝手に彼女の未来を決めている気がしたけれど、宇野さんと落合さんの芝居で脚本で書いたキャラクターたちが複層的に立ち上がって行ったので、彼女がセラピストを続けていくんだろうなというようなラストカットに決めました。」と裏話を話しました。
「それぞれの役には具体的なモデルはいたのか?」という質問には、「結果的に集約体になったと思いますが、1年目の女性のセラピストの方にお話を伺えて、その方が過去に患者さんの願いを叶えることができないまま退院させてしまったと悔しくて泣かれていて、その涙がすごく綺麗で、その涙がどう変化していくんだろう、その子がこれからどういうセラピストになっていくんだろうというところで、彼女をモデルにしようと決めました。その話を宇野さんも一緒に聞いていたんですけれど、お話を聞きながら宇野さんも泣かれていて、そこで二人が自分の中でリンクしました。」と話しました。
柘植役の落合モトキさんについては、「落合さんから出してくれたものが多い役。一緒に病院に伺った時も、彼自身がいろんなところを見学していましたし、撮影当日柘植になって来てくださったので、彼自身の役作りに助けていただきました」と話しました。
遥の彼氏・翔役の細川岳さんについては、「僕は『ガンバレとかうるせぇ』を撮った後3年ほど一緒に住んでいたので、彼が今まで演じたことがない役、自分だからこそ書ける役をやってもらいました」と話し、患者役の佐々木すみ江さんについては、「脚本上ではタエさんはかなり役割だけで書いてしまっていたなと思わされるくらい、お墓前りのシーンで『タエさんってこんな人なんだ』と夫との日々が見えました。タエさんはリハビリも笑顔で受けられていましたが、脚本には書かれていない部分なので、そういうところまで佐々木さんに考えて表現していただいたと思います。」と感謝していました。
リハビリ病院にいたことがあるというペンクラブの会員の方から、「理学療法士は、医者でもない、看護師でもないという微妙な立場で面白い着想だなと思った」と言われ、「患者さんは内側から自分の体を、セラピストはその体を外側から、いかに一つの体を共有できるかというところですが、主体はあくまでも患者さんで。セラピストさんが、『患者さんが歩いてどうしたいかということを応援することしかできないんです』と言って下さった時に、遥という役は、(併映作品である)『ガンバレとかうるせぇ』のマネージャー・菜津役とも繋がるんですけれど、応援することしかできないけれど、どこまで本気で応援できるかというところで、柘植にぶつかってほしかったです。そういう映画が作ることができたら、セラピストさんや患者さんたちにも見てもらいたい映画になるのではないかという思いで脚本を書きました。」と話しました。
最後のメッセージとして、「自分自身、劇場公開というのが今回初めてです。『歩けない僕らは』は40分弱でまさか劇場公開できるとは思っていなかったですし、『ガンバレとかうるせぇ』は6年前に撮った作品で、劇場公開をしたい、したいと思っていたんですけれど、なかなか叶わず、今回こうして念願の公開が決まったので、一人でも多くの方に見ていただきたいです。お近くの方にお伝えいただけると嬉しいです」と話しました。